早朝に岩手山の麓に出かけると、雲の切れ目から覗く陽光が湿った空気に反射し、恐ろしいほど綺麗な虹が出ていることがあります。天気予報にもめげず早起きしてゴルフ場に向かう時のご褒美です。今年は、コロナの影響で週末も盛岡にいたので、周辺でたくさんの虹を見ました。車通勤で空を見る機会が増えたことや、心の余裕が影響していますが、これだけ頻繁に虹に出会う理由があるはずです。

虹ができるには、雨と斜めの日差しが必要でしょうから、朝夕に多いのは理解できます。盛岡界隈が多いと感じるのは、幼少期に外で遊んでいたのに、こんな頻繁に遭遇しなかったからです。生まれ育った東伊豆の海岸線は、極端に平地の狭い町で、東の水平線から朝日があたっても、西側に直ぐ山が迫るため光の屈折スペースがなく、西日も比較的早い時間に山に消えます。虹が出にくい地形だったと思います(朝の虹に関しては、見た記憶も無い)。それに対し盛岡周辺は、①それなりに広い平地が広がり、②東西は雨が降りやすい山に囲まれ、③太陽が低空飛行し(高緯度のため)斜めの日差しが注ぐ、という風に虹には良い条件が揃っている。夏の早朝、雫石の方角に大きな弧の虹が架かるのは、北西にそびえる岩手山(水滴が多い)に向かって、南東からの朝日が降り注ぎ、光の屈折を観察できる場所が広いからでしょう。

虹という漢字がどうして「虫」偏なのか、こどもの頃とても不思議でした。蚊や蜘の漢字なら理解できます。ところが、蜃気楼や虹のような自然現象に「虫」が使われる理由に違和感を覚えました。僕たちは虹の発生メカニズムについて、想像するより先にプリズムを用い教え込まれます。そんな知識の無い大昔の人は、空に架かかる龍や蛇に例えたようです。その蛇の虫偏を流用したという説が濃厚のようです。ちなみにつくりの「工」は、Rainbowのbow(弓)と似た意味を持つそうです。また、虹を七色と決めたのは、ニュートンで、それ以前はギリシャのアリストテレスの学説まで遡るそうです。この二人がここで出てくるとは。。。

ハワイでは車のナンバーに虹のマークがついていますね。福山さんもアップテンポの曲「虹」で「イメージの向こう側」って歌っています。東京開催のFIFAのクラブワールドカップでも、虹色のマフラーです。また、サンフランシスコに行くと、有名なカストロ・ストリートは、たくさんのレインボーフラッグで埋め尽くされています。虹は実に多様な意味で使われるので注意も必要ですが、基本的には調和や平和、苦難の先の世界、幸運の前触れ、夢の国の象徴だと思います。

「やっぱりそうだったのか」を、ついに見つけました。小岩井牧場で有名な雫石町は、昨年のクリスマスから「虹の似合うまち」としてブランド事業を展開していた!のです。7色に染めぬいた円に、町を代表する豊かな自然である、岩手山・雫石川の清流・桜並木・雪の結晶をレイアウトしたシンボルマークです。驚くほど綺麗な虹に出会える、のは僕の錯覚ではなく、そこに住んでいる人たちの自慢の情景だったんです。