「東北屈指の症例数」 「2人の不整脈専門医が常勤」 「三次元マッピングを用いたカテーテルアブレーション」 「種々のデバイス植え込みに対応」
アブレーション
我々不整脈グループは、カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)とデバイス植込みを担当しています。頻脈性不整脈や徐脈性不整脈の治療を通して、患者さんの生命予後やQOLを改善することを目的です。現在、2人の不整脈専門医が常勤で在籍しています。
【実績】
心房細動
カテーテルアブレーション施行例の6割強は心房細動例となっています。標準的な方法である肺静脈隔離術がベースとなっていますが、症例に応じて非肺静脈起源期外収縮(non-PV foci)の焼灼、電位指標の焼灼を追加しています。また、術前CTによる評価も参考にして、高周波カテーテル(図1)、クライオバルーン(図2)、レーザーバルーンを使い分けています。
図1:高周波カテーテル
図2:クライオバルーン
上室性不整脈
非心房細動例の上室性不整脈に対しても、三次元マッピングで頻拍回路を同定した上で焼灼しています。開心術後など、複雑な回路による心房頻拍にも対応可能です(図3)。この症例は、右心房内に2種類の頻拍回路を確認することができました。それぞれの回路に対して焼灼を行い、頻拍は根治することができました。
図3:上室性不整脈
心室性不整脈
心室性不整脈(心室期外収縮、心室頻拍)の症例も少しずつ増えています。器質的心疾患のない特発性心室性不整脈の患者さんでは、カテーテルアブレーションによって不整脈を根治することが可能となります。特発性心室性不整脈は、心室の流出路を起源とすることが多くあります。左心室流出路起源の不整脈では、大動脈、左心室、冠動脈の位置関係を把握した上で治療を進めることが重要です(図4)。この症例では、左室流出路の大動脈弁直下の焼灼にて、心室期外収縮を消失させることができました。
図4:心室性不整脈
【非再発率】
カテーテルアブレーションの成功率は常に話題となります。参考までに、2019年の日本循環器学会総会にて報告した、当院の治療成績を示します。対象は2016年2月〜2018年1月に当院で初回のカテーテルアブレーション を行なった発作性心房細動183例です。解析対象となった177例を1年間追跡した結果、非再発率はクライオバルーン使用例で79.4%、高周波カテーテル使用例で71.4%でした。2群間で有意な差は見られませんでした。2群合わせると、1年後の非再発率は約75%でした。
デバイス
デバイス植込み術に関しては、全体の施行症例数は減少傾向にありますが、リードレスペースメーカや、皮下植込み型除細動器(S-ICD)など、新しいデバイスの植込みが増えています。新しいデバイスの出現により、患者さんとしては選択肢が増えましたが、医師としては適応判断の難しさを感じることが多くなりました。
【実績】
S-ICD
CRT 低左室機能で心室内伝導障害を伴う慢性心不全の患者さんにおいては、両室ペーシングによる心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy: CRT)が奏功する可能性があります(図6)。この症例では、CRTの導入により心電図上QRS幅が短縮し、左室駆出率も著明に改善しました(術前31%→術後58%)。すべての心不全患者さんに適用されるものではありませんが、適応と判断される患者さんに対しては、積極的に検討しています。
図6:CRT
国内実績
ここ10年で、我が国のカテーテルアブレーションの症例数は3−4倍となりました。同様に、当科でも症例数が増えていますが、適応判断は慎重に行っています。日本循環器学会のガイドラインを参考にしながら、患者さんに十分な説明を行った上で判断しています。デバイス植え込み術については、全国的にもここ数年の症例数は横ばいです。多様なデバイスの長所と短所を踏まえ、各々患者さんにあったデバイスを選択することが重要と考えています。
メッセージ
当院では、専門的な診断・治療を通じ、高度なカテーテル治療を提供しています。特に緊急症例については、24時間365日体制で迅速なカテーテル検査、緊急手術を行っています。 急性冠症候群では冠動脈が完全閉塞、血流途絶して1時間を過ぎると、血流再開(再灌流)が15分間遅れるごとに死亡率が上昇します。発症から再灌流までを2時間以内にすることが重要とされており、いかに閉塞時間を短くできるかが予後改善につながります。当院では、ST上昇型急性心筋梗塞で予後改善につながるひとつの目安である病院到着から再灌流までの時間Door-to-balloon time(DTBT)を日本一短くすることを目標とし、迅速な救急診療にあたっています。 また、心臓外科との連携も密に行い、ハートチームカンファランスで患者様ごとの最良の治療法を検討します。患者様の予後を考えた場合、カテーテル治療に必要以上にこだわるより、バイパス手術を選択した方が良い場合がありますが、心臓外科とのコミュニケーションがとれていない施設ほど、カテーテルで無理をしすぎる傾向もあります。あくまでも患者様の希望を優先しますが、プロの目で推奨される治療法をお伝えすることを大切にしています。